枚のこと 4月11日, 2021

「禰豆子」なる女の子が口に竹の切れ端を銜えている図は頻繁に見かけるので,「鬼滅の刃」についての知識や関心がほとんどゼロの者でも見知っていた。
この画像を最初に見た時,自然と思い出したのは「枚」。「ばい」と読む。<昔,夜討ちなどのとき,声を立てぬように兵士の口にくわえさせ,ひもでくびに結びつけた,箸のような木。馬にも用いた。>(漢語林,枚)
兵書や歴史の文章でよく見かける物だと思う。
項梁再破秦軍,有驕色。宋義諫,不聽。秦益章邯兵,夜銜枚擊項梁,大破之定陶,項梁死。
『史記』高祖本紀 秦二世二年(『新釈漢文体系』史記二ではp.521)の例。「項梁は,再度秦軍を破ったので思い上がる気配であった。宋義が諫めても聞きいれない。秦は章邯の軍勢を増員し,夜間に兵に枚を銜えさせ(夜襲して)項梁軍を定陶で撃破した。項梁は死んだ。」
「バイ」はこの字の漢音。我々にとっては「1枚,2枚」の「マイ」(呉音)が普通の読みだけど,「枚乗(バイジョウ)」の例もある。<前漢の文学者。賦にすぐれ,「七発」は,その代表作。>(漢語林)